〜細胞運動の機構
−精子の運動をになう鞭毛の動く仕組み〜
東京大学大学院理学系研究科
 真行寺 千佳子 助教授
群馬県立高崎女子高等学校

 本校SSH講義のスタートを切る講座です。真行寺先生は精子の鞭毛運動の研究については世界的にも有名なのだそうです。難解な内容でしたが、高校生の私たちにも理解できるよう、丁寧にお話ししていただきました。

講義風景
鞭毛は運動装置の一つで、精子では尾のような動く部分をいう。
鞭毛運動の基本的特徴:
@ 屈曲形成(S字状の波が作られる)。

A 振動運動(屈曲が繰り返し作られ、その波が後方へ伝えられる)。

B 波形の調節(鞭毛内のカルシウム濃度の一過的増大による)。

講義風景
細胞運動を担うモーター蛋白質はミオシン、キネシンとダイニンがある。いずれも、ATPを加水分解することによって得られるエネルギーを力学エネルギーに変換して運動を行う。ダイニンは微小管上を滑るように移動する。鞭毛内には、9本の複合微小管(ダブレット)が中心の2本の微小管を囲むように並び(9+2構造)、ダブレット上にダイニンの根元が固定されて並んでいる。ダブレット上のダイニンは隣のダブレットを一方向へと滑らせる。

講義風景
鞭(むち)とは異なり、鞭毛の屈曲の波は減衰せずに伝わる。では、どのような仕組みで、ダブレット間の滑りから屈曲が作られるのか?この謎を解明するため、鞭毛の膜をとり、9+2構造の一部にATPを与えて滑りを誘導する実験を行った。その結果、鞭毛はあたかも2本の繊維から成るかのような挙動を示した。このことから、9本のダブレットの隣り合う2本の間すべてで同時に滑りが起こるのではなく、滑りの量が調節されることによって屈曲ができることが明かとなった。
講義風景
エラスターゼ処理軸糸はATPとCa2+の濃度によって異なる滑り方を示す。(滑りの調節を反映している)
低いCa2+と低いATP→すべてのダブレット間で滑る
高いCa2+と高いATP→中心小管の両側のダブレット間だけで滑る

講義風景
鞭毛が振動運動を起こす原因はどこにあるのか。
    「9+2構造」が振動運動に重要なのか。
    ダイニン分子に内在する特性なのか。
     ↓ 鞭毛・ダイニン分子の力学特性を調べる
    どちらも正しい。
〜生徒の感想〜
正直に言って、私は今まで精子やゾウリムシのゆらゆら動く部分について、なんで動くのだろう、と疑問を抱いたことはありませんでした。でも、今回真行寺先生のお話を聞くことで、今まで考えたこともなかった鞭毛について、もっともっと知りたくなりました。
先生の言葉で印象に残ったのは、「役立たせるために研究しているのではない」ということだった。私は研究とは何かのためになるのだと思っていた。そのような考え方もあるのだと気がついた。自分の好奇心を追求していくのもいいと思った。
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